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連接棒ボルト(ロッドボルト)もまた最も苛酷な繰り返し応力を受ける部分であるから、ニッケルクローム鋼、またはクロームモリブデン鋼等の強靱な材料を使用している。
連接棒の小端部には燐青銅製のピストンピンメタル(ブッシュ)が挿入されており、ピストン頂面で発生する爆発圧力をピストンピンを介して受けている。
大端部はクランクピン部と連結され、2つ割りの薄肉精密メタル(クランクピンメタル)でクランクピンを握り、連接棒ボルトで締め合わされている。
クランクピンメタルはスチールの裏金に銅鉛合金(ケルメット)を溶着又は焼結し、表面に錫鉛合金をオーバレイしたケルメットメタルが多く使われている。
連接棒ボルトはエンジンの内では最も重要なボルトで、その締付加減は非常に大切で必ず指定の締付トルクで締めるようにする。
連接棒の大端部は、2・34図に示すように斜め割りにしたものと、水平割りにしたものとがある。最近の傾向として中高速高過給機関はクランクピン径を太くしているため斜め割り大端部を採用し、整備時ピストンを上部に抜出し可能にしている。又桿部の中心にピストンピンの潤滑油及びピストン冷却用の油孔を設けたものもある。
(2)点検と整備
(イ)連接棒とキャップ
連接棒の桿部と小端部ならびに大端部の付け根およびセレーション部などの亀裂の有無をカラーチェック又は磁気探傷法で点検する。
連接棒の曲りや両端の軸受メタル穴の平行度を点検する。桿部に曲りのあるものは交換する。小形の連接棒は両端部の軸受メタル穴へそれぞれマンドレル(模範)を挿入し、2・35図に示すようにしてダイヤルゲージを用いて平行度を点検する。大形になるとマンドレルが無いため実際のクランク軸とピストンピンを利用して測定する。なお、ウォーターハンマや焼付事故を起した場合は必ず曲りや平行度を調べ異常のない事を確認した後使用すること。
小端ブッシュ内面の損傷などを点検すると共にブッシュが回転していないか(油孔がずれていないか)点検する。ブッシュが回っている時はブッシュを交換する。またブッシュの摩耗しやすい位置は2・36図に示すAの矢印箇所であり、ブッシュ内径を測定する時はこの方向Aとこれに直角方向Bを測定する。摩耗量が使用限度を超えている場合はブッシュを交換する。
大端ハウジングはクランクピンメタルを取外し、裏金が密着するハウジング内面を点検する。勿論キャップ側についても同様に点検する。叩かれた痕跡や油焼けが見られるものは変形していることがある。次いでキャップを規定トルクで締付けシリンダゲージで穴の内径を2・37図のA,B又はA、B、C方向で測定し、真円度が使用限度を超えているものは変形しているため交換する。

 

 

 

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